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2005年12月25日 (日曜日)

最近の声 その2

先日JA1BBP局に録音していただいたファイルをスペクトラムスコープで分析してみました。
右肩下がりなのは意識してレベル配分をした結果なので問題無いとして、200hzと1900hz付近の落ち込みが気になります。
2005setting

僕はdbxのQUANTUM2で音声帯域を4バンドに分割してマスタリング処理しています。マスタリングでは主にダイナミクス処理が中心なんですけど、200hz以下/200-630hz/630-1800hz/1800hz以上でバンドを分割しています。

クロスオーバーは18db/octで、分割周波数は基本からハズレた周波数なんですが、自分の音声フォルマントとかを分析してモニターしながら調整した結果、このようになりました。
落ち込みは元々の声の特徴だと思うのですが、クロスオーバーを現在の急峻な設定から6db/octに変更して様子を見ることにしました。

グラフを見ると、基本的には右肩下がりなんですが、100hz付近と400hz付近のツインピークス(?)から右肩下がり、でも2000-2800hzがフラットなのがわかります。
このツインピークスや高域のフラットな特性は狭めなフィルターで受信しても、大きく音質が変わらない工夫の一つで、試行錯誤の繰り返しで見つけた僕なりのレベル配分なんです。もっとも、グラフはピーク値でプロットなので、同じようにイコライザーで設定しても同一の結果にはなりませんが、周波数特性は音の骨組みとも言える部分なので「同じ傾向の音」にはなると思います。

無線だとツートーンとかシングルトーンの静的な信号で周波数特性を計測しますが、音声の場合はダイナミックにレベルが変動しますので、音作りの最終段階では周波数毎のピークレベル管理の他に帯域全体のダイナミクス管理(無線機のALCと同等だと考えてください)と「周波数毎のダイナミクス」の管理が重要になってきます。

この1年の音作りの経験では、極端に言えば、周波数特性は音の基本的な性格を作り、ダイナミクスはその性格の上に明瞭度や聴き易さに大きく影響することが分かってきました。
逆に言えば、ダイナミクスを上手にコントロールすることで、イコライザーを使わなくてもシルバーイーグルのようなキンキン声でも「耳に優しく」することが出来ますし、ボソボソ声の明瞭度を上げることも可能です(もちろん、ある程度は改善できる・・・という意味です)。

人間の耳は測定器のように絶対値で音を判断するのではなく(稀に絶対音感をお持ちの方もいらっしゃるようですけど・・・)、普通は全体を把握して音の高低や強弱を相対的に判断するので、周波数特性以上に周波数毎のダイナミクスをコントロールすることで、聴いた印象をかなり変えることができるようです。
そのような意味では、エキサイターやエンハンサーなどは、無い音を人工的に付加することで究極のダイナミクス処理をしているとも言えると思います。

この記事ではダイナミクスを全体の音の強弱はもちろん、各周波数毎の強弱をコントロールする意味で使っています。
音声を増幅する場合、増幅率が一定のリニア増幅ではなく、リミッターやコンプレッサーを使って、入力レベル毎に異なった増幅率で増幅を行うことで、自分で思った通りのレベルで出力させることができます。一般的に周波数特性がピーク値でプロットされるのに対して、入力レベルが変動している状態での周波数毎のピーク値をコントロールすることです。

例えば、帯域を分割して増幅率や増幅率が変わるスレッショルドレベルをそれぞれ設定することで、低域は常にピークに近いレベルまで増幅して出力し、高域は低いレベルの入力時「のみ」3db増幅して、スレッショルドレベル以上の信号は低音よりも低い値で制限するように増幅して低域と合成して出力する・・・というような処理のことです。
イコライザーは単純にどんなレベルの信号も同じように「増幅・減衰」させますので、周波数ごとに分割処理するという点では同じですが、結果は大きく異なります。

また、全帯域を一つのコンプレッサーで処理する場合、コンプレッサーを強く掛けると、もっともエネルギーのある部分(普通は低音が多い)でスレッショルドレベルを超えてしまい、コンプレッションが掛かり全帯域の増幅率が下がります。
結果的にコンプレッションが不要な低レベルの高域の成分も低域に引っ張られてしまい、コンプレッサーで増幅率が制限されるために鼻づまり感のある声になってしまいます。
このような状態になるのを防ぐためには、音声帯域を周波数帯でいくつかに分割して、それぞれ別々にコンプレッサーやリミッターで処理する、マルチバンド処理しかありません。

帯域を分割するマルチバンド処理にはクロスオーバーが必須ですが、高価なクロスオーバーを使わずに、イコライザーにダイナミクス機能を追加してマルチバンド処理に近い動作をさせるように工夫したのが「ダイナミックイコライザー」です。
大変優れたアイデアです。ベリンガーのDEQ2496に搭載されていて、既に無線に利用されている方も多くいらっしゃいます。

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コメント

>また、全帯域を一つのコンプレッサーで処理する場合、コンプレッサーを強く掛けると、もっともエネルギーのある部分(普通は低音が多い)でスレッショルドレベルを超えてしまい、コンプレッションが掛かり全帯域の増幅率が下がります。

いよいよ、音づくりの『要諦』に話しが及んできましたね。 小生、このダイナミックイコライザの存在を初めて知ったとき『感動』を覚えました。
 
最近の無線機では、イコライザ機能が若干強化されてきていますが、コンプレッサは、昔のままなんですよね~。 

結果的に、内蔵イコライザにも、コンプレッサに満足できない『少数派マニア』は、仕方なく外付けのオーディオ機器を大枚はたいて買ってしまう訳です。 ううっ(悲)。

投稿: JA1BBP 早坂 | 2005年12月28日 (水曜日) 20時30分

この辺りって説明するのが難しいですよね?チャートだと2次元なので、時間軸を加えて3次元だと説明できるのかもしれませんし、音声が複数の周波数で構成されていて、且つそれぞれの周波数のレベルが常に変動していることを実感していないと理解できませんものね・・・。

実は宅録している方でもマルチバンドはご存じでもダイナミックイコライザーの意味がよく分からない方が多いように思います。
良いアイデアだと思うのですけどね・・・。

投稿: JI1ANI 福井 | 2005年12月28日 (水曜日) 22時58分

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