OCXO vs ルビジウム OCXOの勝ち
ずいぶんと時間がかかってしましたが、自分なりの結論を出すことができました。先達の方々の実験結果と自分では矛盾するとは思えませんし、技術的にも「当然」という結果となりました。
OCXO 970-2157-0 vs FE-5680A ルビジウム発振器 勝者はOCXO
大枚はたいたルビジウムよりもジャンクで入手したOCXOの方が僕にとっては好ましく聞こえましたが、差は僅差です。
僅差の部分は200Hz以下の部分の音声の表現で、OCXOに分があります。そうですねぇ・・・・ルビジウム発振器をNHK朝のニュースとすれば、OCXOはラジオ深夜便に近い・・・ような雰囲気の差があります。
比較環境
4.8MHzの発振器(OCXO/ルビジウム)を自作分周器で48KHzのワードクロックを生成。
生成したワードクロックをSRC2496に入力し、96KHzデジタル入力をワードクロックの48KHzへコンバート。出力をIC-7800へ入力、14メガで送信して、IC-756Pro2でモニター。
マイクはHeil PR-40 マイクプリVoiceMasterPro(A/D変換 96KHz)。
※ルビジウムは192KHz4分周で48KHzも別途比較したが、結果はすべて同じ。
以下は上記に加えてA/Dコンバーターへワードクロックを入れりして、総合的に感じたルビジウム発振器とOCXOの比較です。
比較結果は電源でコロコロ結果が変わります。
簡単に言えば普通のACアダプター(by秋月)単体やスイッチング電源を7812などの3端子で安定化しているとルビジウムの圧勝です。
実験用直流安定化電源にして全体的に電源の質を向上させるとOCXOの音は改善しますが、ルビジウムの音は改善されません。この状態でOCXOが改善してもルビジウムの勝ち。
分周回路の電源を7805から低ノイズリニアレギュレーターに変更し、電源回路にフィルターをいれたりして電源全体を低雑音化するとOCXOの音は更に改善しますが、ルビジウムの音はOCXOほど改善されません。
ここまでやって初めてOCXOとルビジウム発振器の音がほぼ同じレベルになります。
ルビジウム発振器は内部の電源回路をより低雑音なものに変更しないと、一定のレベル以上にはならないと思いますが、一定のレベルというのは、通常のオーディオ機材の発振器のレベルよりも「かなり高い」レベルです。
ですから、ルビジウム発振器に変更すると、音が激変するというのは納得できますし、僕もルビジウム発振器に変更した時、ローカル局も変調の変わりように驚いていました。つまり普通の交信でもわかるほど、音が変わります。マイクを換えたような・・・・感じですかね?
この音が変わる主な原因は位相雑音特性にありそうです。ルビジウム発振器は数百Hz以上の特性が一般的なオーディオ発振器よりも良いために、中高音が綺麗に聞こえる(前に出てくる感じ)ようです。
相対的に低域が引っ込んだような感じになり、周波数特性を元のバランスに戻すためには中高音を約3dB下げて補正する必要がありました。
OCXOの場合は、OCXO自体の基本性能がルビジウム発振器と比較して千差万別です。比較するには少なくともカタログスペックでルビジウム発振器と同等レベルのOCXOが必要です。
ところがオーディオ用の周波数で入手できる水晶発振器はせいぜいTCXO。基本スペックでルビジウム発振器よりも劣っています。
比較して違いがあるのは当然です。ダンプと軽トラ比較するようなモンですわ。
今回は4.8MHzのOCXOを100分周するという、かなり変わった方法で48KHzのマスタークロックを生成しましたが、分周回路の電源をトランス式にして5V用も7805を使わないことが全体の音質向上のポイントでした。
OCXOも含めて普通の水晶発振器を使う場合は電源に相当気を使う必要があって、いわゆる3端子レギュレーターは避けるべきです。
この電源の質による音の変化と比較して、周波数のズレは音質に影響を与えるものの、かなり影響は少ないです。
電源の質はA/B切替テストしなくても「あ、ちがう」と判るレベルですが、0.5Hz程度の違いはA/B切替テストしても「ん~、なんか違う気がするなぁー」程度でしかありませんでした。
実験環境では瞬時のA/B切替ができないため(IC-7800の電源を毎回入れなおすため)に切替に数十秒かかるので・・・・。
実験の結果、ルビジウム発振器は普通のトランス式電源なら、ベストに近いパフォーマンスを発揮するのに対して、OCXOの電源はいわゆる「低雑音電源」を用意しないとパフォーマンスを発揮できない・・・ということが明確になりました。
お手軽に高いパフォーマンスを期待できるルビジウム発振器が圧倒的に有利です。
まとめ。
・ルビジウム発振器はトランス式電源でベストに近いパフォーマンスを発揮する。
・水晶発振器の電源に3端子レギュレーターは使わない(低雑音電源を用意する)。
・位相雑音特性がそのままノイズフロア特性になるような感じで音が変化する
(雑音レベルが低くなっている周波数の音が綺麗に聞こえるような感じ)
OCXO vs ルビジウム なんて気張ってみましたが、やはり発振器としての性能そのまま・・・という結果で、OCXOだから・・・とか、ルビジウムだから・・・というところはありませんでした。
発振器はその性能を発揮できる周辺回路や電源を用意すれば、スペック通りの性能を発揮する・・・という至って当たり前の結果となりました。
現在中古で入手できるルビジウム発振器は、手軽に10mHz単位以下の精度と、良好な位相雑音特性を持っていて、普通の電源でその性能を発揮できる・・・という点で利用価値がとても高いと思います。
僕は無線用ワードクロックとしては200Hz以下が綺麗なOCXOを選択しますが、音楽を聞くためであれば別の判断になるかも知れません。
発振器と音質の関係はスペアナとオーディオアナライザーがあれば、その相関性を示せるようなデータが取れるかもしれませんけど・・・・僕にはムリです。
どなたか頑張っていただけると嬉しいです。
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コメント
評価お疲れ様でした。 大変興味深く読ませて頂きました。 両発振器の特色、性質については今後の参考になります。 それにしてもルビは、電源環境の影響を受けづらいタフマンなんですね。
とはいえ"電気の源"、電源は大事。 オーディオの世界だと当たり前のことですが、ここをケチると、ろくな事がありませんね。 個人的には、システム価格の半分は電源に費やすべきと思っています。 ...かけ過ぎかな(?)
投稿: JA1BBP/ 早坂 | 2010年1月23日 (土曜日) 20時34分
検索でやってきました。
低雑音電源は具体的にはどのようなモノを使われたか教えて頂ければ幸いです。
投稿: JA9LPY | 2010年1月23日 (土曜日) 22時49分
LPYさん
こんばんわ。過去の記事に少しありますがLCフィルターとリニアレギュレーターLT1764を使った自作です。
回路はLT1764のデータシートのものに手を入れ、抵抗は巻線抵抗を使った簡単な回路ですが78xxとの違いはハッキリわかります。
投稿: JI1ANI / 福井 | 2010年1月23日 (土曜日) 23時04分
早坂さん
こんにちは。コメント遅くなりました。
発振器ですから電源に敏感なのは理解しているつもりなんですが、とっても敏感ですね。
ルビジウムは発振器というよりも「発振ユニット」になっていますので、普通の電源を使う前提で中身が作られていて、普通のトランス式安定化電源で十分だと思います。
ルビジウム発振器をDDSの原発に使うとイイ感じだと思うのですけど・・・・F5Kの原発は何メガですか?
投稿: JI1ANI / 福井 | 2010年1月24日 (日曜日) 14時31分